一方、男性については、各年齢の労働力率も上昇していないため、労働力人口は女性以上に減少する。筆者の試算では、男性の労働力人口は今後10年間で累積7.3%減少し、一国全体の労働力人口は5.8%減少する(年率では0.6%減少)。 続く...
ちなみに、減少するのは労働力人口だけではない。女性や高齢者の労働時間は15―64歳の男性よりもかなり短いため、女性や高齢者の比率が高まるにつれ、平均労働時間も短くなり、これも労働投入の減少につながる。
筆者の試算では、2010年代に平均労働時間は年率0.2%減少し、労働人口と労働時間を合わせた労働投入は年率0.8%のペースで減少する。女性の労働力の活用だけでは男性の減少を穴埋めできない。
繰り返すが、女性の労働力率を高める努力は重要である。仮に15―64歳の女性の労働力率が2013年の水準にとどまれば、10年後の女性の労働力人口は8.1%減少し、一国全体の労働力人口も7.6%(年率0.8%)減少する。潜在成長率を少しでも高めるために、女性の労働参画を阻害する税制や社会保障制度を改革しなければならない。
ただ、15歳以上人口そのものが減少している上、高齢化で労働力率の低い65歳以上人口が増加、労働力率の高い15―64歳人口が大きく減少するため、女性の労働力人口の減少トレンドは変わらない。昨年来の好況で女性の労働力人口が急増したため、このまま増加トレンドに転じると期待する向きもあるが、好況は永続しないため、いずれ訪れる不況局面で女性の労働力人口は減少し、景気循環を均(なら)して見れば減少トレンドだった、ということになるだろう。
従来から述べている通り、人口動態を考えれば、労働力人口の減少は不可避であり、それゆえ、潜在成長率を大幅に引き上げられると期待するのは現実的ではないし、そうした高い成長の継続を前提に社会保障制度や財政制度を運営するのも妥当ではない。
*河野龍太郎氏は、BNPパリバ証券の経済調査本部長?チーフエコノミスト。横浜国立大学経済学部卒業後、住友銀行(現三井住友銀行)に入行し、大和投資顧問(現大和住銀投信投資顧問)や第一生命経済研究所を経て、2000年より現職。
*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(こちら)
*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。
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